薬膳Part2 季節に合わせた養生で元気になる

こんにちは。櫻井です。今日は、前回の薬膳のお話 第一弾 四季、五味、帰経に続き、薬膳のお話第二弾は、理論の後編、「食品の組合わせの効果」と、「季節の養生・食材」、そして「調理法」についてのお話です。

前回のまとめ・・・ 
薬膳とは、中医学の二大理論である、整体観と弁証論治をもとにした、おいしくて、毎日続けられる、身体に良い食事というのは前回お話しました。整体観とは、病気を部分的に見るのではなく、体全体の状態として考えることで、弁証論治とは、体に良い食事を作るために、体調とそれに合った対策を見極める方法です。前回のお話を読む

身体に合った食事を見極めるには、症状や患部を見て、声や音を聞いて、症状や経過などを伺って、そして排泄物や、呼気などの臭いを嗅いで見極める方法があります。それらから集まった情報をもとに治療方針を立てます。例えば、冷えが感じられるようなら、熱を加える食事を。肝の状態が悪く、血や気の巡りがとどこって、自律神経に影響をきたしているのであれば、肝の機能を回復させる食事を選択するなどです。

食材には、五気とよばれる寒熱の性質があり、熱を加えるもの(温性、熱性)、熱をとるもの(涼性、寒性)、そのどちらでもないもの(平性)と区別されています。くわえて、五味(酸味、苦味、辛味、甘味、鹹味:塩辛い)があり、それぞれが持つ味によって違った作用を持っています。さらにそれぞれの食材は選択的に、五臓六腑(肝・胆嚢、心・小腸、脾・胃、肺・大腸、腎・膀胱、三焦)に影響を及ぼしやすいものなどの区別があります。これを食品が持つ「帰経」と言います。それらをうまく組み合わせ、その時の体質や体調、症状に合わせたメニューを作り出すのが薬膳です。

本日はこの薬膳を構築する理論をさらに詳しく見ていきます。

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薬効の方向性を決める「昇・降・浮・沈」

五気、五味、帰経の他にも、食物を区別する性質があります。その一つに「昇降浮沈」があります。

「昇・浮」には、上昇する、発散するという意味があります。甘味や辛味の食材に多く、温や熱の性質を持っているものもありますが、すべてがそうではありません。例えば、たんぽぽ・忍冬(金銀花)・野菊・すみれ(紫花地丁)・イヌホウズキ(竜葵)などの「花」の生薬には、浮性質があり、体表部に影響を及ぼしますが、温性、熱性ではなく、涼性の性質を持ち、余分な熱をとる力を持っています。
「降・沈」には、下降する、泄利するという意味があります。酸(渋)味や苦味、鹹味の食材に多く、寒や涼の性質を持っているものが多くあります。貝殻や骨、石などの重い生薬や食品の多くに「沈」の性質があります。例えば、生薬の竜骨(哺乳類の骨)には、鎮静させる、余分な熱をとるという力があります。

組合わせで変わる薬膳の性質

薬膳をつくるとき、食材を単体で使うことは少なく、殆どの薬膳は二品以上の食材から成り立っています。薬膳は食品を組合わせることで相乗効果が生まれます。引き立てるものもあれば、打ち消してしまうものもあります。それら組合わせの関係性を『配伍』と言います。配伍には7種類あります。

単行:食材を単体で使用します。

相須 :熱と温など、同じ力のある食材を複数使い、互いの効果を強めます。

相使 :メインになる食材に、その力を助けるものを加えて、効果を強めます。大根にはちみつを加える。大根の消炎作用に、はちみつの潤い作用が加わり咳を鎮める。

相畏 :メインになる食材の毒性や副作用の可能性を低減させるための食材を加えること。刺身にワサビ、おでんにからしなどもその一つです。

相殺 :相畏に似ていますが、付け合せの食材の毒性や副作用の可能性をメインの食材が打ち消したり軽減したりすること。

相反 :二種類以上の食品などを組み合わせることで、効果を打ち消してしまったり、軽減されてしまうこと。

相悪 :二種類以上の食品などを組合わせて使うことで、重篤な副作用が生じる可能性のあるもの。組み合わせのタブー。てんぷらとスイカ、カニとカキなど。

食材を組合わせて薬膳を作る場合(中医薬を選択する場合も)は、これらに注意して、材料を選ぶ必要があります。

漢方、健康、薬膳、食養生

季節の養生法

次に食材を選ぶにはその季節も考慮に入れる必要があります。冬は寒いので温まる食材を、夏は熱をとる食材を選ぶというようなものです。中医学の古典『黄帝内経』には、各季節の養生法について、次のように書かれています。


立春より立夏までの三か月は万物が古きを推しだし、新しきを出す。天地の生気が生じて、ものみなすべてイキイキと栄える。人は夜寝て朝早く起き、庭に出て歩き、髪をときほぐし、体をゆったりとさせ、心持は生気を充満させ、生まれたばかりの万物と同じようにする。ひたすら成長に任せ殺してはならない。生長に対し助けとなるべきで、奪ってはならない。心を励まし、体を虐げてはならない。これが春の気に適応する養生の道である。これに逆らうと肝を傷り(やぶり)、夏になって寒病を患い、夏の気に適応しなくなる。

春におススメの食材(気を巡らせ、イライラや鬱々した気を流す・昂る陽気を安定させるのに十分な陰分を補う)
気を巡らせるもの・・・落花生、エンドウ、キャベツ、春菊、大根、タマネギ、ネギ、ニラ、三つ葉、ホウレンソウ、ラッキョウ、ミカン、ライチ、柚子、バラ 、ショウガ、ニンニク、茴香
陰を補うもの・・・小麦、山芋、松の実、黒豆、豆乳、黒キクラゲ、白キクラゲ、ほうれん草、アサリ、鮑、イカ、牡蠣、貝柱、カニ、クラゲ、スッポン、ドジョウ、ナマコ、ハモ、鶏肉、鶏卵、豚肉、ツバメの巣、ピータン、蜂蜜、ローヤルゼリー、百合根、クコの実


夏の三か月は、万物が繁り、栄えて美しい。天地の気は交わり、万物は花咲き実る。人は夜寝て朝早く起き、日を厭う(いとう)ことなかれ。怒ったりせず、花が満開になるように、体内の陽気を外に発散できるようにする。これが夏に適応する養生の道である。これに逆らうと心を傷り、秋に瘧(おこり)になり、秋の収気に適応できず、冬になると再び病む。

夏におすすめの食材(過剰な熱をとる・消耗する潤いを補う)
余分な熱をとるもの・・・大麦、小麦、そば、はとむぎ、苦瓜、キュウリ、冬瓜などの瓜類、 レンコン、セリ、セロリ、トマト、ナス、カブ、ゴボウ、梨、ブドウ、緑豆、緑茶、ハスの葉、金銀花

潤いを生み出すもの・・・豆腐,湯葉,緑豆,葛粉,キュウリ,白キクラゲ,冬瓜,トマト,レンコン(生),杏,百合根,梅,柿,スモモ,梨,パイナップル,ビワ,ブドウ,ミカン,メロン,リンゴ,レモン


秋の三か月は収穫の時期である。天気は涼しく風の音は急で、地気は清粛としている。 人は早く寝て、朝早く起き、鶏とともに活動すべきである。 心を安らかにし、収斂する秋の気を緩和させる。神気を収斂し、秋の気を平らかにし、心を外に働かせず、肺気を清浄にしなければならない。 これが秋の気に適応する養収の道である。これに逆らうと、肺を傷り、冬になって下痢し、冬の閉蔵する能力を減少させる。

秋におすすめの食材(乾燥する季節に備えて潤いを補う)
潤いを生み出すもの・・・豆腐、湯葉、緑豆、葛粉、キュウリ、白キクラゲ、冬瓜、トマト、レンコン(生)、百合根、梅、柿、スモモ、梨、パイナップル、ビワ、ブドウ、ミカン、メロン、リンゴ、レモン 注)果物や生野菜は冷えるものも多いので、常温で食べるようにしましょう。


冬の三か月は閉蔵という。 水は凍り、地面は裂ける。陽気を乱すことなかれ。 人は早く寝て遅く起き、日が出るのを待ち、心を伏せて隠すかのように安静にさせる。 話しにくい私情が自分にあるかのごとく。 寒を避け、温かくし、皮膚から汗して、閉じこめている気を奪われてはいけない。 これが冬の気に適応する養蔵の道である。 これに逆らうと、腎を傷り、春に手足が軟弱に冷たくなり、春の生気に適応する能力を減少させる。

冬におすすめの食材(冷えから身をまもり、身体を温めるもの)
体を温めるもの・・・もち米,ヤマイモ,栗,クルミ,ナツメ,松の実,カボチャ,ニラ,ニンニクの芽,ザーサイ,ピーマン,ラッキョウ,ネギ,ショウガ,エビ,太刀魚,ナマコ,アナゴ,牛肉,羊肉,鶏肉,豚レバー,鶏レバー,酒,紅茶,バラ茶,シナモン,コショウ,山椒,唐辛子,ニンニク,八角,黒砂糖,三温糖,酢,大豆油,菜種油,杏,梅,ライチ,竜眼

これらは、黄帝内経の、「四季調神大論篇」にかかれている春夏秋冬、それぞれの季節に推奨される養生法です。この中では、人の体も自然の一部であるという考えに基づいた生活の重要性が語られています。日が出ているときは活動し、日が沈めば眠る。そういった人の活動を、大きな自然の活動と同調させ、穏やかにくらすことで健康に生きることが出来るということでしょう。春は草木が成長するかの如くのびのびとすごし、日の早い夏は、早くから起きて、陽気を内にこもらせることなくしっかりと活動して発散し、秋には、気たるべき冬に備え、心を安らかにして待つ。冬は守る季節。冬眠する動物たちのように、春に出す芽を温存する草木のように、じっとエネルギーを蓄え、穏やかに過ごすことが大切と書かれています。

薬膳、食養生、漢方、健康

調理方法コツ

薬膳を調理するときは、食材同士の相性、季節との相性、個々の体質との相性から献立を考えていきます。基本調理法は6つ。スープにする、粥にする、煮る、炒める、点心にする、漬けこむです。その他、絞ってジュースにしたり、お茶にしたり、蜂蜜などを加えてシロップにしたものもあります。その中でもお勧めしたいのは、スープと、お粥です。

スープは薬膳の基本です。食材の薬効成分がスープに溶け込み、胃腸にも優しく、吸収率も良いです。鍋や季節の野菜たっぷりの鍋なんて言うのも、ある意味では薬膳ですね。調理法としても簡単ですので、まずはスープから試してみてください。お粥もポピュラーな薬膳です。日本人にとっては、お粥と言えば、お米ベースで、うっすら塩味が基本ですが、本場中国にはお米以外にも、麦や粟などをベースにしたものや、たくさんの具を入れた粥もあります。出汁を入れたり、海鮮を入れたり、体調と季節に合わせていろいろ試してみてください。お粥は堅い穀物を柔らかく煮崩しているので、胃腸に優しく消化にも良いので、朝食や胃腸機能低下時にもぴったりです。

毎日おいしく食べて元気に

薬膳とは、中医学の理論に基づいて、健康増進・健康維持のために作られる料理のこと。中医学には、病気を治すだけでなく、病気を未然に防ぐ『未病先防』という考えがあります。食べ物の力をうまく取り入れて、上手に付き合うことで、未病を治し病気を防ぐことが出来ます。いつまでも元気で暮らすために、旬のもの、季節に合ったもの、体質に合ったものを食べることが大切です。春夏は温かく、陽気も盛んになるので、身体の中には熱が溜まりやすくなります。秋冬は寒さが増して、陽気も穏やかとなり、身体の中には冷えが溜まりやすくなります。そんな自然の大きな流れにあわせて、春夏は熱を発散させ、熱がこもりにくく、消耗する潤いやエネルギーを補える食事を、秋冬には、身体を温め、気血の巡りが良くなる食事を心がけ、常に真ん中(中庸)のバランスをとることが大切です。人の体も小さな自然。自然の変化に沿った生き方をすることで健康を保とうというのが中医学の教えです。現代のように、いつでも、どこでも、なんでも手に入ってしまう時代だからこそ、自然の声を聴き、身体の変化に耳を傾け、食べるものを選んであげることが大切です。食べ物が持っている特性をうまく利用して、食養生を始めてみてくださいね。 

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