中医学的 夏を快適に過ごす方法

今年は猛暑の可能性が高くなっているようですね。ここ北海道ではここ数日、山越えの風で気温が上がるフェーン現象のせいで、まだ5月後半なのに、30℃を超える日が続いています。暑いのはある程度気持ち良いんですが、過ぎるとつらくなりますよね。

過ぎる暑さは、中医学では『暑邪(しょじゃ)』といって、高熱や大量発汗、口渇など激しい熱症状による悪影響を及ぼす自然変化として注意を促しています。

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夏は暑邪に注意!

ジメジメの湿邪のブログでもお話したように、自然界には風邪(ふうじゃ)・暑邪(しょじゃ)・湿邪(しつじゃ)・燥邪(そうじゃ)・寒邪(かんじゃ)・熱邪(ねつじゃ)という「六淫邪気(りくいんじゃき)」という六つの病気の原因になりうる環境変化があります。この邪気たちが口や鼻、そして毛穴などから体内に入り込むことで体内の陰陽や寒熱のバランスを崩し、様々な症状を発生させます。

暑邪とは、熱の邪気です。夏になると気温の上昇に伴い身体も熱されて体温が上がります。中医学的には「陽気が高まる」という状態です。

陽気は、気分を高揚させ、熱を生み、身体を一種の興奮状態に持っていくエネルギーなので、活動時には必要ですが、これがずっと昂ったまま、もしくは必要以上に昂ってしまうと、顔の赤みやほてり・のぼせ、喉の渇き、多汗、苛々など不快な症状となってしまいます。

さらにこの熱(陽気)を発散しようとして体は汗を出させます。そうすることで放射熱として熱が奪われるのですが、汗をかき過ぎると、その汗とともに潤いとエネルギーも発散してしまい、体内では潤いやエネルギーの不足状態になってしまいます。そうすると、不眠、寝汗、だるさ、疲れ、吐き気、動悸、いらいら、怒りっぽくなるなどの症状が見られるようになってきます。

また、暑いのに汗をかけず、熱がこもってしまうという人もいます。こういう方は、体内にこの熱を発散させるための汗の元、潤いや血が不足している状態の方です。血や潤いが不足していると、暑いのに汗もかけず熱がこもってしまって、のぼせがひどくなるという状態が起こります。熱は潤いをさらに消耗するので、さらに血や潤いの不足を招く、熱がこもるという負のスパイラルに陥ります。

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夏を快適に過ごすために

熱を下げる涼性の食材を食べましょう

暑邪の襲撃をかわして夏を乗り切るためには、日ごろの養生が大切です。夏は身体の余分な熱を奪う食材たちが旬を迎えるので、あずき、いちじく、カニ、かんぴょう、きゅうり、キウィ、金針菜、空心菜、くらげ、黒きくらげ、氷砂糖、ココナッツミルク、ごぼう、小麦、さとうきび、塩、しじみ、醤油、スイカ、すっぽん、五行草(スベリヒユ)、すもも、蕎麦、そら豆、大根、たけのこ、緑茶、ちんげんさい、冬瓜、豆乳、どくだみ、トマト、なす、なまこ、ゴーヤ、ノリ、パイナップル、白菜、ハトムギ、バナナ、みそ、メロン、たまご、緑豆、 緑豆もやし、りんご、レモン、れんこんなどを食べましょう。

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殺菌作用のあるものを

夏場はいろんなものが腐りやすい季節です。殺菌作用や胃腸機能を改善する作用のあるミョウガ、ねぎ、わさび、生姜、山椒、シソなども積極的に摂りましょう。これらは気を巡らせる作用もあるので、イライラや食欲低下時にもおすすめです。

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酸味を摂りましょう

酸っぱいものを取るのも効果的です。酸味には収斂作用といって、汗のかきすぎをおさえる力があります。必要な潤いを体内にしまっておけるように、酸味を適量摂りましょう。また酸味には食欲増進の作用もありるので、酢の物、梅干し、ラッキョウなどを適量摂りましょう。

また酸味は甘味と合わさると潤いを生むので(『酸甘化陰(さんかんかいん)』といいます)、是非一緒に食べてみ下さい。酸味と甘味は例えば、梅干しとご飯などです。夏場の朝、お粥に梅干しはミネラルとエネルギーと水分を同時補え、さらに胃腸に優しい最適の朝食といえます。

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冷たいものをひかえましょう。

夏場はどうしても冷たいものを摂りがちです。しかし、胃腸は冷たいものに弱く水分に弱いので、摂りすぎると、胃腸機能を低下させ、だるさや気力の低下、食欲の低下、軟便・下痢など夏場バテの原因となります。詳しくは『湿気の多い日の養生法』をご参照ください。美味しいですが、冷たいビール、かき氷、アイスクリーム、サラダ、お刺身は控えめに。

また、暑い夏はどこに行っても体を冷やされがちです。現代ではクーラーがどこ行ってもかかっており、さらに自販機、コンビニなど冷たいものがどこでも手に入る環境にもあるため、暑邪のほか、寒邪にも気をつけなくてはいけません。夏場は意識して冷たいものを避けるようにしましょう。

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水分補給はこまめに、早めに

喉が乾いた状態はもうすでに細胞は脱水状態にあります。平常時ならそれからの水分補給でも良いですが、暑く、汗を大量にかく夏場はそれでは遅すぎます。

夏場の給水は「こまめ、早め」を忘れずに。その際は、出来るだけ常温で、砂糖入りや炭酸飲料ではなく、お茶やミネラル入りのお水を飲みましょう。緑茶には、水分補給の他、余分な熱をとり去ってくれる効果もあり、おすすめです。

また、夏の果物(野菜?)の代表ともいえるスイカは、余分な熱を奪い潤いを補ってくれるので是非とも摂っておきたいですね。スイカに塩をかけるのは、甘味が増すだけでなく、発汗によって失われたミネラルの補給にもなります。また、塩味の「鹹味(かんみ)」は体内の水分調節をしている「腎」へと導く作用があるので、潤いを補給してくれるスイカに少量の塩は、中医学的にみてもとても理に適っています。

トマトに塩もいいですね。夏場の暑い時期はお出かけ前にトマトに塩をかけて食べていくといいですよ。

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中医学的養生法

夏場の3か月を中医学では、草木が成長して茂り、陽気が最高潮に達する時期で、人のエネルギーも大気に放出することが大切と考えます。この時期は早起きが重要で、日中は運動して1日1回は陽気を発散させるために汗をかくように心がけることが大切と言われています。 しかし、真夏の昼間に運動をすることは避けたほうが良いでしょう。できれば午前中、もしくは太陽が沈んでからにしましょう。

夏は気が盛んに発生し、汗が出て毛穴が開きます。毛穴が開くというのは、外敵が体内に侵入しやすくなるということです。皮膚が暖かさで緩み、毛穴が開くことで、邪気が体内に侵入しやすくなります。肌が緩んで外敵から身を守る防衛力が低下する夏は、実は四季の中でも特に養生に気を遣わなくてはいけない季節なんです。夏場素肌をさらして風に当たったりすると、一気にカゼを引いてしまうのはそのためです。

それとは逆に、毛穴を閉じて熱がこもらないようにすることも重要で、冷水で顔を洗ったり、水風呂に入ったり、冷たいものを飲んだりするのを避け、温かいものを口にして、適度に汗をかきましょう。

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夏の暑さ、あなたは?

夏の暑さに弱い方とそうでない方がいます。これは体内に熱と潤いがどれだけあるかの違いといえます。もし普段から火照りがちで、汗をかきやすく、口や喉の乾きが強かったり、不眠、いらいら、寝汗などを感じている方は、夏の暑さも堪えることでしょう。反対に肌が白く、ぽっちゃりしていたり、冷えが強い方には、夏の暑さは心地よくはなくとも、冬の寒さよりはましと感じられるでしょう。

中医学では、冬に悪化する病気や冬の慢性病は、夏にしっかり養生することによって回復しやすいと考えられています。これを「冬病夏治(とうびょうかち)」といいます。冬は冷えにともない乾燥でも体調を崩すので、乾燥に弱い呼吸器系の疾患である慢性気管支炎や喘息は夏に対処することが良いでしょう。冷えがつらいかたも、必然的に陽気が高くなる夏は養生や漢方の効果が出やすいです。     

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暑邪のピークは夏真っ盛りの7・8・9月ですが、これからくる梅雨も湿度が高くなり汗をかきづらいので、体に熱がこもりやすくなります。適度な運動と、余分な熱や湿を排出してくれる夏野菜を適度に摂って対策しましょう。

夏は秋や冬を健康に乗り切るための養生の場と考え、冷たいものを控えて、野菜をしっかり食べて、早寝早起きを心がけ、身体を作っておきましょう。汗も適度にかくのも大切ですよ。冬に体調が悪くなる方は、夏こそ改善する機会です。「未病先防」をお忘れなく。