本当にその水、必要? 「2リットル神話」の危険

NASAの気象学者ギャビン・シュミット博士は5月14日、「4月の観測結果からすると、99%の確率で2016年は観測史上最高になる」とTwitterで指摘するほど今年は暑くなりそうですが、暑いからと言って水分、とりすぎてないでしょうか????
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人の体にとって大事な水

水が嫌いな人ってごく稀にいらっしゃいますが、私たちの身体の約60%は水でできていることからもわかるように、人間は水無しでは生きられません。水だけを飲んでいても2~3週間から1か月ほどは生きられると言われていますが、水もなければ1週間も持たず、生存可能日数は4~5日と言われています。体内の水分が急激に低下すると、血液は濃縮し、固まり易くなり、体温を下げることも出来なくなり、臓器不全や意識障害などの熱中症のような状態になります。これがいわゆる脱水症状です。

もし体内から水がわずか約2%(体重60キロの人で1.2ℓ)失われると、喉の乾きや食欲不振などの不快感を感じる様になり、約6%(体重60キロの人で3.6ℓ)失われると頭痛や吐き気が脱力感などに襲われ、約10%(体重60キロの人で6ℓ)で筋肉は痙攣をおこし、腎不全や循環不全がおこり、約20%(体重60キロの人で12ℓ)失うことで死に至ります。

人が一日に消費する水分を見ていくと、呼気から失われる水分は400ml、肌から蒸発するのが約600ml、尿と便から1.5ℓ前後。人がなにもしないで一日で失う水分量は約2ℓ~2.5ℓと言われています。それに対して補給している水分は、呼吸から200~300ml、食べ物から1ℓ前後なので、水分での補給は800mlから1.3ℓ程度が望ましい言われています。

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あなたにあった水分摂取を

水がいかに大事か、水分摂取がいかに大切かを書いてきましたが、水分摂取をするうえでさらに大切なことがあります。それは、データはすべて平均値であり、個体差や性別による差は考えられておらず、体格、体質、体調、生活環境、食環境などによって必要量には違いがあるということと、水を飲んでも吸収できないと、排出するために臓腑に負担がかかってしまって健康になるどころか様々な症状に悩まされる可能性があるということです。

「1日1.5ℓ~2ℓ水を飲まないといけない」とはよく聞きますが、もしあなたの足がむくんでいるなら、それは明らかに飲み過ぎのサインです。また、舌を見てみて、舌のへりにでこぼこと歯形がついていたら、それも水分とりすぎを示す一つ可能性を示しています。身体がだるくても、食欲がなくても、水分の摂り過ぎの可能性が考えられます。

水分摂取はとても大切ですが、それを吸収する胃腸や処理する腎臓が元気であってはじめて、たくさん水分を摂れます。もう一点、水分を摂取しても、それがすべて体の潤いに変わるかどうかについても考えなくてはいけません。

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水は大事 でも水だけじゃ渇きを止められない

中医学でももちろん、体内の水分量を十分に確保することはとても重要視されています。中医学では体内の潤いのことを『津液(しんえき)』と言います。津液は、血液を除いた体内の水分の総称で、内臓に含まれる液体、細胞の組織液、関節液、リンパ液、羊水、涙、鼻水、唾液、よだれ、汗などの液体成分はすべて津液です。津液は、体内を潤しながら、栄養を供給し、関節の動きを滑らかにし、粘膜や肌を守っています。

脾胃(消化器系)で飲食物から作られた「津液」は脾の働きによって肺に運ばれ、体表に散布されます。そのなかで余分なものは体の下の方に降ろし、必要な分は腎がまた体の上部に昇らせ、不必要になったものは尿として膀胱に送り体から排泄されます。もしそれらの臓腑が十分に働いていないと、津液は停滞してしまい、余分な水分として体に残ってしまいますし、飲む量が膨大だと、それらの臓器に負担をかけ、弱らせてしまいます。

身体に不必要な水分がたまると、むくみ・身体の重だるさ・食欲減退・下痢・咳・痰・胸苦しさなどの症状を引き起こすこともあります。喉が渇いて、水を飲んでも飲んでも渇きが収まらないというお悩みをよく伺います。それは、水を飲んでもそれがそののまま体内の潤いである「津液」に変わるわけではないからです。さらに、水を摂りすぎたことで、湿気に弱い脾胃(胃腸)は機能が低下してしまい、うまく津液を作り出せていないことも考えられます。

体が本来必要としている以上の水分の摂取は、脾胃(胃腸)に負担をかけます。特に氷が入ったのみものや、冷蔵庫・自動販売機から出されたばかりの冷たい飲料は、脾胃の機能低下を招き、しいてはエネルギーや血、そして体内の潤いである「津液」の生産能力を低下させてしまいます。

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食べ物から潤いを作り出そう!

中医学的な適切な水分の補給とは、調理された温かい食物からとる事です。水分も、野菜スープや味噌汁、鍋のスープなどとしてとるほうが、しっかり吸収でき、同時に潤い補給に役立つ葉物野菜もたっぷり摂れ、うるおい成分である「津液」にも変化させやすいと考えられています。

「1日2ℓを毎日とならなくてはいけない」と考えすぎて、水分が過剰な状態でも飲み続けていると、むくみや体や頭の重だるさ、悪心、嘔吐、泥状便、鼻水、皮膚からの分泌物、頭痛やむくみなどがみられるようになります。水を毎日飲んでいて、こういった症状がみられている場合は、飲みすぎの可能性が大きいです。そういう場合は、喉が乾いたら、温かい飲み物を少しずつ飲んでください。身体の潤い補給には、水分だけよりも、温めた野菜や、果物などから摂取する方が望ましいです。

体内の潤い補給によい食べ物は、豚肉、カモ肉、鶏肉、すっぽん、はまぐり、あわび、黒豆、豆乳、豆腐、レンコン、キュウリ、トマト、ユリ根、胡麻、白きくらげ、梨、ライチ、レモン、メロンなどで、控えたい食材は香辛料、薬味野菜、冷たいものです。

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まとめ

体の水分はどのように作られ、どのように影響しているか、どんな食べ物・飲み物を摂ればいいのかを考えるよりも、単に『水を決まった量飲む』という行為はあまりにも簡単で理解しやすいため、安易に実行されているのだと思います。

水を飲みすぎても体調不良になることもありますので、口に入れるもの全体と、体調や体質を考慮することが本来は大切です。