知ってるようで知らない"ストレス"とは

職場ストレス、人間関係のストレス、経済的なストレス。「ストレスと」一口に言っても様々なタイプのストレスがあります。ストレスは一般的に不快なものとして扱われることが多いですが、決して悪いものばかりではなく、「良いストレス Eustress」 というものも存在します。例えば適度なノルマや納品の期日などは「良いストレス」と言え、適度な緊張感生み出し、仕事の効率をあげてくれます。この「適度な緊張感」というのは、仕事をする上でも、日常生活に張りをもたせるためにも、とても大事な要素です。これらの良いストレスは通常、「やる気」となって私たちの体と心のバランスを保ってくれています。

しかし反対に、「悪いストレス Distress」もあります(「Distress」が「ストレス:Stress」という言葉の語源になったとも言われています)。私たちがよく使う「ストレス」という言葉が指す"あの"ストレスのことです。
この悪いストレスを受け続けると、集中力が低下し、仕事や勉強の能率が落ち、睡眠や休息もままならず、疲れだけが溜まっていき、食欲が落ち、眠れなくなったり、酷いときには動悸や過呼吸になったりと、日常生活を送るうえで大変不都合な状況を作り出します。

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ストレスの元、「ストレッサ―」とは?

ストレスとは元々、物理学の用語です。ストレスとは本来、「なんらかの刺激が加えられた結果示された、ゆがみや変調」のことをいいます。これを人体に当てはめたのが、カナダのハンス・セリエという人です。ハンス・セリエは、その「何らかの刺激」の事を指して「ストレッサー」と名付けました。

ストレッサーは4種類あります。
□物理的ストレッサー
・高温や低音による刺激、放射線や騒音による刺激など。
□化学的ストレッサー
・酸素の欠乏・過剰、薬害、栄養不足など。
□生物的ストレッサー
・病原菌の侵入など。
□精神的ストレッサー
・人間関係トラブル、精神的な苦痛、怒り・不安・憎しみ・緊張など。

これらが私たちの体に悪影響を及ぼすストレッサ―です。これらストレッサ-から"ストレス"を受けた人体は、段階的な反応を示します。

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三段階のストレス反応

私たちの身体はストレスに対して様々な反応を示しますが、反応段階は3段階に分かれています。

ストレスを受けたばかりのファーストステージは、「警告反応期」と呼ばれています。「警告反応期」とは、刺激に対して体が対応できるよう反応・警戒をしている状態です。例えば暗い道を歩いていると、いきなり暗闇から「わっ!」と声がしたとします。身体は一瞬硬直したあと、ドキドキと鼓動が早まります。これが警告反応期にある状態です。

警告反応期を過ぎてもストレスを受け続けている場合は、セカンドステージの「抵抗期」に入ります。ある意味ストレスに順応した状態で、先ほどの例でいうと、身体が硬直した後、ドキドキがちょっと落ち着いて、また歩き出した状態です。順応とは言っても、ストレス状態が無くなった訳では無いので、エネルギーは消耗されていきます。

さらにストレスを受け続けていると、サードステージである「疲憊期(ひはいき)」に突入します。とっさの反応と順応を経てもなおストレスが続き、文字通り、疲憊していく段階です。

暗い道の例でいうと、後ろから足音が常に聞こえる。けど振り返るとと無くなる。また歩き出すと聞こえるというのが続く状態です。驚いて走ったり、何度も振り返ったりするでしょうが、そのうち疲弊し、正常に考えたり、行動したりできなくなります。パニックを起こして無我夢中に走り出したり、その場で気絶してしまうかもしれません。 

通常の生活の中でも疲憊期までストレスが溜まってしまうと、膨らみすぎた風船が破裂するように、心は抵抗できる許容範囲を超えてしまい、衰弱し、正常さを失ってしまいます。

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ストレス反応

脳がストレスを認識すると、脳は対処のために指令を出します。これを「闘争・逃走反応(fight-or-flight response)」といいます。「 闘争・逃走」とは「戦うか、逃げるか」という意味で、どちらもとっさの判断と行動を迫られている状況に対処する反応という意味です。

これは動物が、敵から身を守るために備わった能力だと考えられています。いわゆる「恐怖」というもののが引き起こす生体反応です。動物然り、大昔の私たちの暮らしも然り、本来生きるということは、生命を脅かされる危険と常に隣り合わせです。その中を逃げ伸びて、生き続けるために必要な能力が「闘争・逃走反応」です。

闘争と逃走反応の生理学

人体は危機が迫ると、消化吸収や、体力回復に使うためのエネルギーを大腿筋や上腕筋などの大きな筋肉に回し、とっさの動作にも反応出来るように体を準備します。人の体は、ちょうど車のアクセルとブレーキのような役割をする交感神経と副交感神経という二つの自立神経によってコントロールされていますが、この時はアクセル神経である、交感神経が優位に立ち、直ぐにでも行動できるように準備します。

脅威が去れば直ぐにブレーキ神経である副交感神経が働き、筋肉もリラックスできるのですが、脅威(ストレス)が続いてしまうと、ずっとアクセルが踏まれた状態になり、体は常に待機状態、警戒体制になっているため、やがて疲弊してしまいます。

ストレスを受け続けていると、リラックスの仕方すら忘れてしまう過緊張の状態になります。そうすると、自律神経は制御の方法が解らなくなってしまい、混乱し、めまいや耳鳴り、抑うつ、不眠、イライラ、不安などが出てくる、所謂「自律神経失調症」になってしまうのです。

また、ストレス状態では、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールも副腎皮質から分泌されます。分泌される量によっては、血圧が上がったり、免疫機能の低下や不妊にも影響することが分かっています。ストレスを受けると体が緊張状態になり、ストレスを受け続けることで、ずっと緊張している状態が持続し、大量にエネルギーを消耗し、やがて疲弊し憔悴します。

現代の私たちの生活では、猛獣に襲われるなどのとっさの脅威は少なくなりましたが、代わりに、仕事の問題、人間関係、金銭問題など、長く続くストレスに悩まされるようになりました。このような長く続くストレスに対しては、大昔に私たちが獲得した緊急時に役立つ闘争や逃走の反応だけでは対応出来ないので、現代に合わせた新たなスキルが必要になってきました。

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山で一人では見つけたくない足跡ですね。

ストレスを溜めない為に

最近の研究では、「ストレスが溜まっている」と感じている人とそうでない人では、43%も死亡率が違うそうです。おおらかな人ほど更年期障害も少ないと言われていますが、そのためには、日ごろの生活でうまく発散しておくことが大切です。

ストレスはためない事が一番ですが、充実した時間を過ごそうと思うこと自体が結果的にストレスになったりもするので、なかなか簡単にはリラックスできません。

ストレスの中でも特に精神的なストレスは、個人の主観によるものが大きく、誰が何にストレスを感じるかというのは様々で、他人には理解してもらえないことも少なくありません。自分なりのストレス軽減方法で、さらに自分も周りも、肉体的にも精神的にも傷つけない方法を見つけ、うまく実践することがとても大切です。

以前のブログでお知らせした、マインドフルネス瞑想法はその解決法の一つです。気になる方はこちらのブログもどうぞ。
□マインドフルネス瞑想法

またこちらでは、ストレスを受けやすい性格タイプとその対処法を心理学的なアプローチで書いています。こちらも是非ご参考ください。
□ストレスを受けやすいタイプと対処法のお話し

中医学的にストレスを考察したものと、その対処法も過去記事にございますので、症状別食養生や漢方薬での対策法を知りたいときはこちらをどうぞ。
□イライラの中医学